シリーズ「消費構造の変化と進化するマーケティング」

(1)売手と買手の一体化「メルカリ」の意味するもの

現代社会はAIやインターネットの発展によって、驚くべきスピードで変貌をとげつつあり、その影響は社会基盤から人間生活の全般にわたり、消費構造の変化として現れて来ている。

販路コーディネータは、中小企業にとっての事業戦略コンサルタントの役割を担う者である。研鑽した知識や経験だけに頼ることなく、刻々と変貌する社会とそれに伴う消費行動の変化の意味をしっかり把握することで、的確な支援やコンサルティングを行うことが求められる。

この稿では、市場で起こっているマーケティングの進化に関わる事象を取り上げながら、急速な消費構造の変化の意味を分析し、販路コーディネータの実践活動の一助になるものを提供できればと考えている。

そこで筆者自身の研鑽も含めて、これからに役立つ商品開発やマーケティング戦略の“きも”を学習する機会と考えて筆を執ることにした。

さて一つ目の事例だが、今、大いに話題となっているものにフリマアプリ「メルカリ」がある。このアプリは消費者が不要になった物を新たな需要者に譲り渡すという、フリーマーケットの取引をデジタルに置き換えたものだ。中間の流通業者が介在しないCtoCの取引をネット上でマッチングする仕組みの簡便さが受けて、日本ばかりでなくアメリカでも急速に拡大成長している。

その背景にあるのは、ネット社会への移行に伴うコミュニケーションの変化、社会的価値とビジネスの融合、地球環境を保全しつつ共生するシェアエコノミーの経済思想だ。20世紀までのビジネスでは、売手の事業者が人々の欲望を充たし、更なる欲望を駆り立てる新商品を、大衆のいる市場に送り出して商機を生み出してきた。ところがインターネットを介在して、互いの商品や要望を持った相手を、容易に確認できるアプリケーションが誕生した。それによってマーケティングの究極の目的である、売手と買手のダイレクトな一対一の取引が可能になったのだ。

メルカリの世界では、これまで一方的に売手もしくは買手であった売買取引が、あるときは売手で、別のときは買手となる双方向の取引に根源的変化を遂げている。つまりコンシューマー(消費者)からプロシューマー(生産消費者)に変わることを可能にしたのだ。「コトラーのマーケティング3.0」(朝日新聞出版2010年刊)で予告されていた「参加の時代と協働マーケティング」が実行されている事例といえる。

このメルカリに今年の7月から、新たに「メルカリチャンネル」という新サービスが登場したのをご存知だろうか。 このメルカリチャンネルは動画のライブ配信を許可されたユーザーが、登録予約した時間帯(毎日21?22時の間の20分間)に動画をライブ発信できるサービスである。先日あるテレビ番組で、農業生産者がメルカリチャンネルで、温室栽培の新奇な野菜の栽培状況を写しながら、料理法や効能をライブで流すと、視聴者からすぐさま注文が入ってくる様子が紹介されていた。

これまで小規模事業者の流通チャネルの開発には、生産ロットや取引口座の開発等、様々な障壁が立ちはだかってきた。またネットショップでの販路開拓にも、購買者に気づいてもらうには大変な努力が必要だった。でも、このメルカリチャンネルなら、手作り生産の小規模商品もマニアックな商品も、試作品の試験販売もライブ動画を通じて説得力のあるプレゼンテーションが出来て、きわめて有効な販路になると思える。

これからの販路開拓ルートの一つとして、この新たな方法を試しておくことは大事なことと思われる。

マーケティングに関わるトピックス

2017年のノーベル経済学賞は、米国シカゴ大学のリチャード・セイラー教授が受賞した。セイラー氏は心理学を反映させた「行動経済学」の発展に貢献したことが受賞理由である。その理論は「人間は合理的ではない」ことを前提に、人々に「ナッジ(小さな誘導)」を与えることで、個々人の選択の判断に影響が出るというもので、現代マーケティング理論の要になるものであり、マーケティングに関わる者としては嬉しい知らせである。

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コラムシリーズ「消費構造の変化と進化するマーケティング」
(1)売手と買手の一体化「メルカリ」の意味するもの
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