シリーズ「消費構造の変化と進化するマーケティング」

(5)コンビニが担う「高齢者」と「過疎地域」に向けた新たな戦略

コンビニは市場の伸び悩みに直面しマーケティング戦略の転換を謀っている。コンビニが市場戦略を転換する二つ目の方向は、ターゲット層の転換に向けた取り組みだ。コンビニは都会の住宅地域にすむ若年の単身者層を狙って、簡便なフード、小分け食品、生活用品等を提供して成長してきた。

ところが近年は全世代にわたる単身・小世帯化が進み、コンビニの利便性に目覚めた高齢世代の売上が伸びてきている。かつて地域商店街の顧客だった高齢者が、商店街の衰退によって必然的に食料品や生活用品を求めて最寄りのコンビニを利用するようになった。今後は伸びが期待される高齢者層をターゲットにニーズの掘り下げが進むだろう。例えば、生鮮食品や介護用品等の品揃えが重要ポイントになるが、この辺りは食品スーパーやドラッグストアとの競合領域であり、これまでの棲み分けを超えたせめぎ合いが激しくなる。

デジタル戦略を掲げるセブンイレブンは2018年5月10日、北海道の一部地域で実験しているネットコンビニの展開を全国に拡大していくと発表した。ネットコンビニとは、客がスマートフォンから商品を注文し、在庫があれば最短2時間で指定した場所に配送するという新サービスだ。実験地区では配達料は216円(税込み)。最低注文額は1,000円で、3,000円以上では配達料は無料となるという。CRMをキーワードにしたサービス拡大戦略だが、店舗オペレーションの負荷に加盟店オーナーは不安が募る。

すでにセブンイレブンは、食品を中心とした宅配サービス「セブンミール」を展開しているが、配達コストの負担で加盟店の取り扱いが伸び悩んでいる。ネット通販に対抗するリアル店舗を起点としたデジタル戦略は欠かせない。だがネットコンビニの全国展開は、首都圏のような人口密集地域と買い物難民のいる過疎地域では客の需要内容も異なる、予想のつかない戦いに挑もうとしている。

一方、過疎地域で自治体とも連携しつつ、事業業績が好調なコンビニがある。

顧客満足度調査(日本生産性本部)のコンビニ部門で2年連続1位になったのが「セイコーマート」だ。セブンイレブンなど全国展開の大手に対して、過疎地域の多い北海道を地盤として1,100店舗を運営し、地域カバー率は97%を超える。ここの売りは店内調理の「ホットシェフ」だ。併設の厨房でカツ丼、カツカレー、クロワッサン、おにぎり等を調理し、出来たてを販売している。

売り場構成は他と変わらないが、異なるのは品揃えだ。地盤である北海道産の食品を多く取り揃えている。農業生産法人や水産会社をグループ内に持ち、野菜、サラダ、総菜などの加工品も水産品も地元密着で扱っている。北海道産の規格外メロンを活用したアイスシリーズ等、人気商品を生んでいる。「高付加価値・低価格」を実現しているのは、原材料調達から、製造、物流、販売といった一連の流れを自社グループで担う“自前主義”にある。セイコーマートが過疎地域でも高業績を持続できるのは、「24時間営業の旗を掲げていないこと」と、「大半が直営店であること」も大きな理由だ。

地方の都市はどこへ行っても、人口減少の引波に呑込まれたように商店街が衰退している。商圏人口を求めるスーパーは、過疎地域ではかなり広域でしか出店されず、地域の生活を支えるコンビニはかけがえのない存在となっている。

「コンビニエンスストアの経済・社会的役割に関する調査」(経産省・平成27年3月)によれば、人材の雇用、地元産品の販売、災害時の営業継続、24時間営業等に対する地域の期待は大きい。自治体との連携を通じて販売機能の他、「銀行」「郵便局」「行政サービス」等の地域インフラとしての機能も大いに貢献が認知されており、単なるビジネス枠を超えた存在として役割を期待されている。

       

メールマガジンのご紹介

メールマガジン

コラムシリーズ「消費構造の変化と進化するマーケティング」
(1)売手と買手の一体化「メルカリ」の意味するもの
(2)単身・小世帯の「自助」を助ける商品・サービスへの期待
(3)実店舗とネット通販の攻防と趨勢
(4)小売市場の勝ち組コンビニに迫る危機
(5)コンビニが担う「高齢者」と「過疎地域」に向けた新たな戦略
(6)消費市場で急伸するドラッグストアの戦略

お問い合わせ